慶應義塾大学病院が、2025年3月に日本初となる「オリゴ転移センター」を設立したことを契機とする対談記事が載っていました。
慶應義塾大学病院が日本初のオリゴ転移センターを設立:がん種の垣根を越えたディスカッションから生まれる根治の可能性 | がん情報サイト「オンコロ」
オリゴ転移とは、一般的に5個以内とされる少数のがん転移が存在する状態を指します。これまで転移性のがん患者の標準治療は全身療法が中心でしたが、近年、抗がん剤治療などの進歩により画像では捉えられない微小転移の制御が可能になってきました。これにより、画像で検出可能なオリゴ転移に対して局所治療(手術、放射線治療など)を行うことで、根治や延命につながる可能性が注目されています。
なお、膵臓がんについても、オリゴ転移に対する体幹部定位放射線治療(SBRT)が保険適用されているところです。
オリゴ転移の治療には、がん種ごとの明確なガイドラインやエビデンスがまだ不十分なのが現状です。そこで慶應義塾大学病院のオリゴ転移センターは、消化器外科、呼吸器外科、泌尿器科、放射線治療科、腫瘍内科など、がん治療に携わる複数の診療科が連携し、個々の患者に合わせた「究極の個別化治療」を提供することを目指しています。
センターでは、患者の意向を重視し、まずはセカンドオピニオンという形で時間をかけた丁寧な説明を行います。局所治療だけでなく、検査から全身治療まで一貫した体制を整え、各分野のエキスパートが連携して最適な治療方針を決定します。
センターでは、症例を蓄積することでオリゴ転移治療のエビデンスを創出し、将来的には前向き試験の実施も目指しているとのことです。
薬物療法を長く続けているオリゴ転移の方、体力的な理由で薬物療法が難しい方、そして標準治療を進める中でより積極的に局所治療を検討したいと考えている患者にとって、根治の可能性を追求する新たな選択肢となることが大いに期待されます。
(2025.07.19)