FoundationOne Liquid CDx がんゲノムプロファイルのTMB等に関する承認取得

 令和6(2024)年5月、FoundationOne Liquid CDx がんゲノムプロファイルがTMB等に関する承認を取得しました。

2024年05月27日|FoundationOne Liquid CDx がんゲノムプロファイル、がん関連遺伝子のコピー数異常の検出結果、およびbTMBスコアの情報提供に関する承認を取得|ニュースリリース|中外製薬 (chugai-pharm.co.jp)

 

この記事をご覧になってすぐに内容がお分かりになった方は、かなり勉強をされていることと思います。大多数の方については、用語も難しくてよく分からないというのが実情だと思いますので、少し補足説明をさせていただきます。

 

はじめに、「FoundationOne Liquid CDx がんゲノムプロファイル」というのは、いわゆる遺伝子パネル検査の一種で、血液を検体とするリキッドバイオプシー検査です。手術等で採取した組織検体で行う「FoundationOne CDx がんゲノムプロファイル」が実施できない場合等に補助的に行われます。

後者については、既にがん関連遺伝子のコピー数異常の検出結果及びTMBに関する承認を取得していましたが、この度、前者についても、同様の承認を取得したということです。

 

これらにどういう意味があるのかというと、免疫チェックポイント阻害剤や分子標的治療薬の効果を予測する重要な指標となることが挙げられます。

特に、膵臓がんにおいて保険適用で使える唯一の免疫チェックポイント阻害剤であるペムブロリズマブ(製品名:キイトルーダ)の適応に大きく関わります。この薬を健康保険で使える条件は、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)又は遺伝子変異量高スコア(TMB-High)のいずれかに該当している必要があります

MSI-Highとは、マイクロサテライト(数個のDNAからなる塩基の短い文字列が何度も繰り返している部分)の繰り返し回数に異常が起こった状態です。皆さんも診断時にMSI検査というコンパニオン検査を受けて、キイトルーダの適応が判定されているかと思います。もっとも、これに該当するのは約1%程度といわれています。

一方、TMB-Highとは、がん細胞が持っている遺伝子変異の数が多い状態です。

MSI-HighとTMB-Highとでは、一定の関係性は認められるものの、TMB高スコアの腫瘍が必ずしもMSI-Highとは限りません。そのため、MSI検査で陰性だった場合でも、遺伝子パネル検査でTMB-Highと判定され、キイトルーダの適応となる可能性があるという訳です。

これまでは組織検体による検査でしかTMB-Highの判定ができませんでしたが、今後はリキッドバイオプシーでも判定できるようになり、キイトルーダの適応となる可能性が多少上がったことになります。


(2024.07.08)