切除可能膵がんに対する術前放射線化学療法の可能性:IMRTを用いた新たなアプローチ
切除可能膵がんに対する術前放射線化学療法の可能性:IMRTを用いた新たなアプローチ
先日、切除可能な膵がんに対する術前化学療法に関する記事を掲載しました。
膵臓がん患者と家族の集い - 「切除可能」でも術前化学療法を
今回は、切除可能な膵がんに対して、強度変調放射線治療(IMRT)を用いた術前放射線化学療法の有効性を検討した研究が紹介されていましたので、以下にご紹介します。
切除可能膵がんに対する術前化学放射線療法の可能性:強度変調放射線治療を使った検討 | がん情報サイト「オンコロ」
IMRTとは?
IMRT(Intensity-Modulated Radiation Therapy)は、腫瘍の形状に合わせて放射線の強度を調整しながら照射する技術です。これにより、腫瘍に高線量を集中させつつ、周囲の正常組織への影響を最小限に抑えることが可能となります。短期間で治療が完了する点も利点の一つです。
研究概要
2013年〜2021年に診断された切除可能膵がん患者198名のうち、基準を満たす130名を対象に解析が行われました。このうち、IMRT併用群(58例)と、(術前療法を実施しない)先行手術群(72例)を比較した結果、有意差が認められたというものです。
今後の展望
さらに、腫瘍マーカーなどを用いた適切な患者選択によって、IMRTを用いた術前放射線化学療法が、現在主流となっている術前化学療法(ゲムシタビン+S-1療法)よりも優れた効果を示す可能性があることが示唆されています。
この知見を踏まえ、腫瘍マーカーで選択された切除可能膵がん患者を対象に、第2相試験が開始されており、今後の成果が期待されます。
膵がん治療は依然として困難な領域ですが、こうした新たなアプローチが標準治療の選択肢を広げる一助となることを願っています。
(2025.11.15)