現在、転移を有するステージIVの膵臓がん患者に対する一次治療では、アブラキサン・ゲムシタビン併用療法(Gem-nabP療法)が広く実施されています。これは、数年前の比較試験でFOLFIRINOX療法よりも優位性が認められたためです。
一方、Gem-nabP療法後の二次治療では、FOLFIRINOX療法と同系統で、より副作用が少ないとされるオニバイド(ナノリポソーム型イリノテカン)が用いられることが多くなっています。しかし、オニバイドにはFOLFIRINOX療法で使用されるオキサリプラチンが含まれていません。このオキサリプラチンは、BRCAなどの特定の遺伝子変異を持つ患者に高い効果を示す可能性があることが知られているため、オキサリプラチンを試せないことが課題となっていました。
この課題を解消する新たな選択肢がNALIRIFOX療法です。これは、オニバイドにオキサリプラチンを加えた治療法で、FOLFIRINOX療法やGem-nabP療法よりも高い効果が期待できるとともに、オニバイド単独ほどではないもののFOLFIRINOX療法よりは副作用が軽いとされています。
こうしたことから、NALIRIFOXは既に海外では一次治療の標準とされています。しかし、これまでの臨床試験には日本の施設が参加していなかったため、日本人患者における有効性と安全性は確認されていませんでした。
このたび、第56回日本膵臓学会大会において、転移を有する膵腺がんの日本人患者に対するNALIRIFOX療法の有効性と安全性が、いずれも良好な結果を示したと発表されました。
この結果は、転移性膵腺がんの日本人患者にとって、NALIRIFOXが有効かつ安全な一次治療の選択肢となる可能性を示すものであり、国内における臨床現場への早期導入に大きな期待が寄せられています。
転移を有する膵腺癌の1次治療でNALIRIFOXは日本人でも有効性と安全性が確認【日本膵臓学会 2025】:がんナビ
(2025.07.28)