令和7(2025)年4月25日から30日にシカゴで開催されたAmerican Association for Cancer Research Annual Meeting 2025(AACR 2025)において 、膵臓がんに関わる各種研究結果が発表されました。AACR(米国癌学会)は、米国臨床腫瘍学会(ASCO)、欧州腫瘍学会(ESMO)と並ぶ世界的な癌学会です。
はじめは、経口選択的RAS阻害薬zoldonrasib(RMC-9805) が有望な抗腫瘍活性を示し、安全性も良好だったという内容です。
既治療を含むKRAS G12D変異陽性固形癌に経口選択的RAS阻害薬zoldonrasibが有望、NSCLCでも抗腫瘍効果を示す【AACR 2025】:がんナビ
なお、KRAS G12D変異を対象とする薬については、これまでも様々な研究結果を取り上げているところです。
次は、新規ATR阻害薬ART0380と低用量イリノテカンの併用療法が、既治療で有効な治療選択肢がない様々な癌種の進行固形癌患者に有望な可能性が分かったという内容です。
新規ATR阻害薬ART0380と低用量イリノテカンの併用療法が既治療の進行固形癌に有望、特にATM遺伝子無・低発現の症例に良好な抗腫瘍効果【AACR 2025】:がんナビ
特に、ATM遺伝子の発現がない、又は低い症例に対し良好な抗腫瘍効果を示したとのことです。抗がん剤は効き方に個人差が大きいですが、こうした研究が進めば無駄な治療を減らしていけるものと考えます。
最後は、siRNA(低分子干渉RNA)封入エクソソーム(iExosomes)は毒性を認めず、一部の患者で病勢安定が得られたという内容です。
治療歴のある膵管腺癌にKRAS G12Dを標的としたsiRNA封入エクソソームは忍容性に優れる【AACR 2025】:がんナビ
こちらもKRAS G12D変異を対象としたものですが、一つ目のzoldonrasibとは全く別のアプローチとなります。
いずれの研究も、まだ初期の段階であり実用化までには相当の時間を要すると思われますが、特にKRAS G12D変異については膵臓がん患者の4割ほどに発現していると言われていますので、将来的に有効な治療選択肢となることを願っております。
(2025.05.03)