令和6(2024)年8月23日、東証グロース市場上場で静岡県に本拠を置く㈱キャンバスは、開発を進めていた抗がん剤候補化合物CBP501に関して、欧州医薬品庁から膵臓がんに対するオーファンドラッグ指定の通知を受領したと発表しました。
オーファンドラッグ(希少疾患治療薬)は、患者数の少ない疾患の新薬開発を促進するための制度で、この指定によって、同社は今後欧州におけるCBP501の開発に関して、臨床試験プロトコル作成支援(科学的助言)などを受けることができます。また、CBP501が販売承認された場合には、10年間の市場独占権が与えられるとしています。
CBP501は、がん細胞に直接作用するのみならず、「がん微小環境」「がん免疫」「がん幹細胞」などに関わる広範な作用によって、膵臓がんのように免疫細胞が少なく、がんを攻撃できない免疫コールドながんを免疫ホットにする「免疫着火剤」であるとされています。このため、免疫チェックポイント阻害剤との併用により薬効を高める効果が期待できると思われることから、抗がん剤シスプラチンとニボルマブ(商品名:オプジーボ)との3剤併用による臨床試験が行われてきたところです。
現在、同社では、準備を進めている欧州での第3相試験を開始して、その臨床試験データをもとに、米国で追加試験なく薬事承認の獲得を目指すという戦略を描いています。
少し専門的になりますが、8月20日に発表された、株式会社キャンバスの2024年6月期決算説明の内容を書き起こした資料のURLは次のとおりです。長い時間と莫大な費用を要する創薬の流れなどがお分かりいただけると思いますので、ご興味のある方はご参照ください。
臨床試験で結果を出し製品化されるとしても、まだ先の話(目標年次:2027年)で、現時点では国内での承認も見通せていませんが、日本の企業ということもあり、今後の進展を期待したいと思います。
(2024.08.27)