令和6(2024)年7月19日、国立がん研究センターは、「世界最大規模の統合解析により、がん個別化医療による生存期間の延長を確認」したと発表しました。
がんに対する治療については、従来、がん種別にその進行度で治療方針等が決定されていましたが、それに加え、遺伝子変異ごとに一人一人の体質や病状に合わせて治療等を行う「がん個別化医療」が求められています。
我が国においては、その推進に向けて、国立がん研究センター東病院の吉野 孝之副院長等による研究チームが、産学連携全国がんゲノムスクリーニングプロジェクトであるSCRUM-Japan MONSTAR-SCREEN プロジェクト(以下、MONSTAR プロジェクト)を全国規模で進められているところです。今回はこれらの研究に参加された膵臓がん患者も含む16,144人の患者の分子プロファイル及び治療成績や生存期間等に関する解析を行ったものになります。
解析の結果、分子プロファイルから見つけられたバイオマーカーに適合する治験薬等による標的治療を受けた患者は、標的治療を受けなかった患者と比較して、生存期間が延長することが明らかになり、バイオマーカーに基づく「がん個別化医療」の意義が改めて確認されたとのことです。
現在、がんの分子プロファイルは、遺伝子パネル検査等によるゲノム解析に加えて、RNA解析(トランスクリプトミクス)、蛋白質解析(プロテオミクス)、代謝物質解析(メタボロミクス)等を一括して分析する「マルチオミクス解析」を活用する研究が進んでいます。特定の遺伝子変異があっても、残念ながら必ずしも全員に標的治療の効果が上がる訳ではありませんが、こうした総合的な解析によって将来的には奏功する条件等が一層明らかになり、がん個別化医療の精度がより高まることを願っています。
MONSTAR プロジェクトでは、がん個別化医療のさらなる発展を目指して、分子プロファイル技術を駆使した新たな大規模研究「MONSTAR-SCREEN-3」を開始予定です。
患者さん向け参加方法(MONSTAR-SCREEN-3) | 国立がん研究センター SCRUM Japan (ncc.go.jp)
遺伝子パネル検査については、保険適用の場合、標準治療終了後又は終了見込みという条件がありますが、このプロジェクトでは、1次治療の方も対象となると思われます。また、遺伝子解析などを行う際の費用負担もなく、全国にある参加施設で実施予定ですので、機会があれば是非参加されることをお勧めします。
(2024.07.21)