がん治療用ウイルス製剤「OBP-702」第Ⅰ相臨床試験の準備開始
がん治療用ウイルス製剤「OBP-702」第Ⅰ相臨床試験の準備開始
先日、岡山大学が標記の臨床試験の準備を開始したと発表しました。
膵臓がん患者の福音となるか!?新しいがん治療用ウイルス製剤OBP-702 第Ⅰ相臨床試験の準備開始 - 国立大学法人 岡山大学
この薬は、いわゆる「腫瘍溶解性ウイルス」と呼ばれ、悪性腫瘍の細胞に感染し、細胞死を誘導するものです。感染したがん細胞を溶解し、新たなウイルス粒子を放出して他のがん細胞にも感染するとともに、宿主の免疫を活性化させる効果があります。正常細胞ではウイルスが増殖しないため、副作用が少ないとされています。
岡山大学はこの分野に長年取り組んでおり、第1世代のがん治療用アデノウイルス製剤「テロメライシン(OBP-301)」の開発を進めてきました。
食道がんに対する放射線治療を併用した腫瘍融解ウイルス「テロメライシン」の臨床研究の最終報告 - 国立大学法人 岡山大学
しかし、テロメライシンは一部のがん種では十分な治療効果が得られないという課題がありました。そこで、膵臓がんに発現するドライバー遺伝子(がん抑制遺伝子)であるp53遺伝子を組み込んだ第2世代のがん治療用ウイルス製剤「OBP-702」が開発されました。動物実験において膵臓がんに対する効果が確認され、今回、初めて患者を対象とした第Ⅰ相臨床試験の準備が開始されたところです。
臨床試験は、来年度から2年間の予定で実施されますが、岡山大学病院と愛媛大学医学部附属病院の2施設のみで行われるため、参加できる患者は限られるかもしれません。
膵臓がんに対する腫瘍溶解性ウイルスとしては、単純ヘルペスウイルスを活用した「C-REV(旧称HF10)」の開発状況も注視してきましたが、新たな情報はなく、進捗は不明です。
いずれにしても、腫瘍溶解性ウイルスは膵臓がん患者にとって新たな希望となる治療薬の可能性を秘めています。実用化までにはまだ時間を要すると思われますが、今後の進展に期待したいです。
(2025.04.01)