令和6(2024)年6月、セルペルカチニブ(製品名:レットヴィモ)が、RET融合遺伝子陽性の進行・再発の固形がんに対する治療薬として国内承認されました。
レットヴィモ、RET融合遺伝子陽性の進行・再発の固形がんに対する治療薬として国内承認 – がんプラス (qlife.jp)
細胞は、増殖のスイッチの役割を担うタンパク質のはたらきによって増えていきます。RETタンパク質はそのスイッチのひとつで、RET遺伝子から作られます。
RET遺伝子に変化が起きると、異常なRETタンパク質が作られ、常にスイッチがオンの状態になってしまいます。セルペルカチニブ(製品名:レットヴィモ)は分子標的薬と呼ばれる飲み薬で、RET融合遺伝子からできたタンパク質に作用し、がん細胞を増やすスイッチを切って、がん細胞の増殖を抑えるという訳です。
甲状腺がんや肺腺がんについては、既に保険適用となっていましたが、この度、RET融合遺伝子陽性の進行・再発の固形がんに対する治療薬として適応追加の承認を受けたものです。
この変異は、多くのがん種にわたり存在していることがわかっており、膵臓がんについても一定程度認められます。実際、今回の承認の判断に使われた臨床試験の結果では、大腸がんと並んで評価例数は13と最多であり、そのうち7例(53.8%)に奏功が認められています。
また、別の臨床試験の解析結果によると、RET融合遺伝子だけでなく、様々な融合遺伝子でも効果が認められたとの報告もあります。
この薬については、数年前から「LOXO-292」として臨床試験の結果等を注視してきました。アメリカでは2022年9月に固形癌について迅速承認されており、満を持して国内承認されたという印象です。
遺伝子パネル検査を受けてRET融合遺伝子陽性が認められる確率がどの程度かは分かりませんが、少しでも治療選択肢が増えるのは希望が持てることだと思います。
(2024.08.01)