「切除可能」でも術前化学療法を――岡山大学病院、術前治療で2年生存率83%を達成
「切除可能」でも術前化学療法を――岡山大学病院、術前治療で2年生存率83%を達成
2025(令和7)年10月22日、岡山大学病院は、切除可能な膵がん患者に対して術前化学療法(GS療法=ゲムシタビン + S-1 )を導入した結果、2年全生存率が83%に達し、従来の手術先行群(61%)を大きく上回る成果を得たと発表しました。
切除可能な膵臓がんに対する術前化学療法で長期生存率が向上 - 国立大学法人 岡山大学
切除可能な膵がんに対する術前化学療法は、日本膵臓学会のガイドラインにおいても、2019年版から推奨されています。ただし、最新の2025年版への掲載に際しては、さまざまな議論が交わされたとされています
実際、一部の患者さんからは「抗がん剤治療中にがんが進行して、手術ができなくなったらどうするのか」といった不安の声も聞かれます。確かに、術前治療には“待つ”時間が生じるため、不安を感じるのは自然なことです。
今回の発表は、そうした不安に対して「実際に効果があった」という臨床データをもって応えるものであり、治療選択を後押しする力を持つものと言えるでしょう。
本研究では、術前に抗がん剤治療を受けたすべての患者が外科的切除に至り、術後の合併症も少なく、安全性が確認されました。術前治療によりがんの進行を抑えることで、手術の成功率が高まり、再発リスクの低減にもつながる可能性が示唆されています。さらに、治療中に転移などが判明した場合でも、術前にがんの性質を見極めることで、手術の効果が期待できない“隠れた進行例”を見抜くことが可能になります。
つまり、術前化学療法は「手術の機会を減らす」のではなく、「本当に意味のある手術を実現する」ための戦略と捉えることができるのではないでしょうか。
(2025.10.25)