外科医不足は“給料アップ”だけで解決できるのか
外科医不足は“給料アップ”だけで解決できるのか
近年、研修医が保険診療の現場を経ずに美容医療など自由診療へ直接流れる、いわゆる「直美(ちょくび)問題」が象徴するように、保険診療の負担の大きさや制度の魅力低下が医療人材の流出を招き、制度そのものの持続可能性が問われています。
こうした背景の中、厚生労働省は、食道がんや膵臓がんなど高度な消化器外科手術を行う病院に対し、診療報酬を上乗せする方針を示しました。
食道がん摘出など「高度な手術」で診療報酬上乗せ…厚労省、消化器外科医の不足解消へ「給料増」で優遇(読売新聞オンライン) - Yahoo!ニュース
外科医不足の解消を目的とし、上乗せ分の一部を外科医の給与に充てる仕組みです。しかし、この取り組みにはいくつかの課題が見られます。
■ 1. 給与増だけでは外科医不足の根本解決にならない
外科医不足の背景には、
• 長時間に及ぶ手術
• 夜間・休日の緊急対応
• 心身の負担の大きさ
など、勤務環境そのものの厳しさがあります。
そのため、給与を増やすだけでは、若手医師が外科を選ばないという構造的な問題は解消しにくい状況です。
■ 2. 対象病院が限定され、地域格差が拡大する可能性
加算の対象は、
• 経験5年以上の外科医が6人以上
• チーム制・交代制の導入
といった条件を満たす大学病院などに限られます。
中小病院は対象外となる可能性が高く、都市部と地方の医療格差が広がる懸念があります。
■ 3. 「加算の30%以上を医師に支払う」仕組みの実効性が不透明
今回の制度では、病院が受け取る特別加算の30%以上を担当外科医に支払うことが求められています。
しかし、
• 病院側の配分方法の透明性
• 実際に待遇改善につながるかどうか
• チーム医療における公平性
• 他職種とのバランス調整
といった点は病院の運用に左右され、制度の意図が現場で十分に反映されるかは不透明です。
■ 4. 即効性はなく、効果が現れるまで時間がかかる
外科医の育成には長い年月が必要で、今回の加算が実際の医師数増加に結びつくまでには時間がかかります。短期的な外科医不足の解消策としては限定的です。
🔵【まとめ】
診療報酬の上乗せは外科医不足への一歩ではあるものの、
• 勤務環境の改善
• 地域格差の是正
• 外科医育成の長期戦略
• 保険診療制度の魅力・持続可能性の向上
といった構造的課題を同時に解決するものではありません。
外科医不足は医療体制全体に関わる深刻な問題であり、今回の施策はその一部を補うにとどまるという点を押さえておく必要があります。
(2026.03.22)