2025年8月、福岡市で開催された全国がんプロ協議会・市民公開シンポジウムにて、膵臓がんを含むがん性疼痛に対する緩和的治療として「緩和IVR(画像下治療)」が紹介されました。これは、放射線診断技術を応用した低侵襲の治療法で、痛みの軽減や生活の質(QOL)向上を目的としています。講演を行ったのは九州大学大学院の岡本大佑氏で、神経ブロックをはじめとする複数のIVR技術について具体的な症例を交えて解説しました。
この記事の中ほどで紹介されている神経ブロックは、内臓神経に神経破壊薬を注入して痛みの伝達を遮断する治療法です。膵がん術後に再発し、強い背部痛に悩まされていた50代男性の症例では、オピオイド系鎮痛薬を1日20回も使用していたにもかかわらず痛みがコントロールできていませんでした。神経ブロックを実施した結果、痛みは10点中9点から4点に軽減し、レスキュー薬の使用回数も1日4回程度に減少。副作用の軽減にもつながったと報告されています。
また、膵がんに伴う骨転移によって椎体に痛みが生じた場合には、神経ブロックの前段で紹介されている骨セメント(経皮的椎体形成術)が適応となるケースもあります。部位にセメントを注入して安定化を図ることで、早期の鎮痛効果が期待されており、放射線治療と併用されることもあります。
こうした緩和IVRは、病院によって取り組みに濃淡があり、膵臓がん患者にもあまり知られていないのが現状です。岡本氏は次のように呼びかけています。「緩和IVRというと、手術や化学療法が奏功しなくなって、何の治療もできなくなってから考える治療というイメージを持っている方が多いのではないかと思います。しかし、早期にIVRをすることで症状緩和が得られ、患者さんの生活の質も向上します。ですから、できるだけ早めに紹介していただけるとありがたいです」(岡本氏)。
(2025.10.16)