先日「イベント情報」でお知らせしたところですが、昨年11月23日 (土) に大阪国際がんセンター×パンキャンジャパン北海道支部第4回合同膵がん教室が開催されました。
この度、この教室の中で行われた北海道大学病院消化器外科Ⅱ診療講師・病棟医長の中村透氏による「膵がん外科治療の最前線」と題した講演のレポート記事が掲載されましたので、お知らせします。
拡大手術や縮小手術が注目される膵がん外科治療の最前線:がんナビ
講演においては、術式の具体的な解説の後、「拡大手術や縮小手術が注目される膵がん外科治療の最前線」についてのお話がありました。
拡大手術については、胃や腸と肝臓をつなぐ太い血管である門脈にもがんが広がっていて、これまで一般的には手術ができないとされていた患者に対しても、手術が実施される場合があるという事例の紹介がありました。
一方、縮小手術については、膵体尾部切除の際に脾臓を温存する試みを始めているとの紹介がされたところです。脾臓を温存するとその近くのリンパ節も残しますが、北海道内の多施設共同研究で膵体尾部切除術を実施した235例を調べた結果でも、脾臓に近いリンパ節への転移は全くなかったそうです。脾臓は免疫機能に関わる重要性が分かっており、mRNAがんワクチンを用いて再発のリスクを低減できるとの海外での研究結果もあることから、新たな治療の福音になる可能性も指摘されるところです。
また、膵がんの手術では、手術支援ロボットを用いた低侵襲手術も広がっているとの紹介もありました。
「ロボット手術を受けた患者さんは傷も小さいし、回復も早いように見えますが、ロボット手術が従来の手術に比べて本当に良いかどうか、その優位性はまだ分かっていません。(中略)技術が発展すれば、こういった手術が全てロボットでできる日が来るかもしれません」と中村氏は講演を結んでいます。
実際、膵臓がんにおけるロボット手術は本当に過渡期で、病院によって対応が大きく分かれています。
一例を挙げると、日本有数のがん専門病院である国立がん研究センター中央病院とがん研有明病院ですら方針が異なっています。
国がん中央病院では、膵尾部切除術にはロボット手術の適応がありますが、膵頭十二指腸切除術ではこれまで実施しておらず、最近になって「近日導入の予定」となったところです。
低侵襲膵切除(腹腔鏡下膵切除) | 国立がん研究センター 中央病院
一方、がん研有明では、膵頭十二指腸切除術にも積極的にロボット手術を取り入れています。
今後の技術の進展により、低侵襲なロボット手術の適応範囲が拡大されることを期待したいと思います。
【参考URL】
膵がん教室で行われた「膵がんに対する最新の薬物療法」と題した講演のレポート
(2025.01.08)