【ASCO 2026 速報】膵臓がん治療における新しい選択肢 経口RAS阻害薬「ダラキソンラシブ」の第III相試験データが発表
【ASCO 2026 速報】膵臓がん治療における新しい選択肢 経口RAS阻害薬「ダラキソンラシブ」の第III相試験データが発表
米国シカゴで開催されている米国臨床腫瘍学会(ASCO 2026)にて、現地時間2026年5月31日、新しい経口RAS阻害薬「ダラキソンラシブ(daraxonrasib)」の第III相臨床試験(RASolute 302試験)の最終的な結果が発表されました。
本演題は、今回の学会の主要セッションである「プレナリー・セッション(Plenary Session)」に選出されるとともに、医学誌『New England Journal of Medicine(NEJM)』にも同時掲載されました。膵臓がん治療の今後に大きな影響を与える可能性のある重要な研究として注目されています。
※ 本記事は、現地で公表された資料をもとにAIが速報として作成したものであり、内容の一部に細かな誤りが含まれる可能性があります。
※ 詳報記事を紹介します。(2026.06.02追記)
既治療の転移を有する膵管腺癌に経口RAS阻害薬daraxonrasibは化学療法よりもPFSとOSを有意に延長、OS中央値は約2倍【ASCO 2026】:がんナビ
1.臨床試験(RASolute 302試験)の主な結果
今回の試験は、一次治療後に病勢進行を認めた転移性膵管腺がん(最も一般的な膵臓がん)の患者さん約500名を対象に実施された国際共同第III相試験です。患者さんは、従来の標準的な化学療法を受ける群と、1日1回経口投与のダラキソンラシブを受ける群に割り付けられ、有効性と安全性が比較されました。
主な結果は以下の通りです。
★全生存期間(OS)
患者さんが生存した期間の中央値は、化学療法群:6.7か月、ダラキソンラシブ群:13.2か月でした。
★無増悪生存期間(PFS)
がんの進行が抑えられていた期間の中央値は、化学療法群:3.6か月、ダラキソンラシブ群:7.2か月でした。
★客観的奏効率(ORR)
腫瘍が一定以上縮小した患者さんの割合は、化学療法群:11.2%、ダラキソンラシブ群:31.6%でした。
【ハザード比について】
全生存期間におけるハザード比は0.40でした。ハザード比は、ある時点での死亡リスクを比較する指標です(1より小さいほど新薬が優れていることを示します)。今回の結果は、試験期間中の死亡リスクが化学療法群と比較して約60%低かったことを示しており、統計学的にも明確な有効性が示されました。
2.変異別サブグループ解析:幅広いRAS変異で一貫した有効性
膵臓がんの約90%以上にはRAS遺伝子、とくにKRAS遺伝子の変異が認められます。これまでの分子標的薬の多くは特定の変異のみを標的としていましたが、ダラキソンラシブは複数のRAS変異に作用する「RAS(ON)阻害薬」として開発されています。
今回の解析では、膵臓がんで頻度の高いKRAS G12D、G12V、G12Rを含む主要なKRAS変異群においても、一貫した有効性が認められました。また、それ以外のRAS変異を有する患者群やKRAS野生型(変異なし)でも同様の傾向が示されており、幅広い患者さんが治療対象となる可能性が示されています。
3.QOL(生活の質)に関する結果
試験では、患者さん自身が評価する生活の質(QOL)についても検討されました。その結果、ダラキソンラシブ群では、身体機能や全般的健康状態の悪化までの期間が延長し、疼痛(痛み)の悪化リスクは約49%低下していました(ハザード比0.51)。
膵臓がんでは、がんの進行に伴う痛みや食欲低下、体重減少などが大きな負担となります。今回の結果は、単に生存期間を延長するだけでなく、良好な体調や日常生活を維持できる期間の延長にもつながる可能性を示しています。
4.安全性と副作用
長期投与された患者さんのデータからは、新たな重大な安全性上の懸念は報告されませんでした。重度(グレード3以上)の有害事象は、化学療法群の57.5%に対し、ダラキソンラシブ群では43.6%と低い割合でした。
主な副作用としては、皮疹(発疹や皮膚の乾燥)、口内炎、下痢などが報告されています。これらの副作用の多くは、休薬や減量、適切な支持療法によって管理可能とされており、副作用による治療中止率は、化学療法群:11.2%、ダラキソンラシブ群:1.2%でした。
また、経口薬であるため通院負担が比較的少なく、日常生活との両立がしやすいことも特徴の一つです。
5.薬剤耐性研究と今後の課題
分子標的薬では、治療効果が得られた後に薬剤耐性が生じることが課題となります。今回の発表でも、治療後に再進行した患者さんの解析結果が紹介され、耐性獲得のメカニズム解明に向けた研究が進められていることが報告されました。
また、開発元であるRevolution Medicines社では、次世代RAS標的薬や他剤との併用療法の開発も進められており、今後さらに治療選択肢が広がることが期待されています。
6.今後の承認スケジュールと日本への影響
現時点でダラキソンラシブは開発中の未承認薬です。米国ではすでにFDAから「Breakthrough Therapy(画期的治療薬)」の指定を受けており、今回の第III相試験結果をもとに承認申請が進められる見通しです。
また、米国では2026年5月より拡大アクセスプログラム(Expanded Access Program:EAP)も開始されており、承認前の段階から一部の患者さんが治療を受けられる体制が整えられています。
日本で保険診療として広く使用できるようになるためには、今後の申請・審査手続きが必要となりますが、今回の結果を受けて国内導入への期待は高まっています。
今回のASCO 2026で発表された「RASolute 302試験」は、長年治療選択肢が限られていた膵臓がん領域において、新たな治療の可能性を示した重要な成果といえます。今後の承認審査や長期追跡データ、さらなる研究の進展が注目されます。
(2026.06.01)