【続報】膵臓がん治療の新たな可能性:新薬「ダラキソンラシブ」の仕組みと展望
【続報】膵臓がん治療の新たな可能性:新薬「ダラキソンラシブ」の仕組みと展望
話題の新薬「ダラキソンラシブ」については、先日、ASCOでの発表を速報としてお伝えしました。
その後も、さまざまな媒体で報道が続いております。
膵臓がん治療の「ゲームチェンジャー」 死亡リスクを60%減らす革新的な新薬 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
難治性の膵がん治療に新たな希望 新分子標的薬が生存期間を標準治療の約2倍に 米国専門学会で革新的発表 | NEWSjp
膵臓がん「生存期間を2倍に延ばした」新薬の臨床試験結果 世界のがん治療医がスタンディングオベーションしたワケ | ライフ | 東洋経済オンライン
こうした中、報道ではあまり触れられていない「汎RAS阻害薬」の具体的な仕組みなど、気になる点について、AIを活用し患者目線で深掘りし、分かりやすくまとめてみました。
■ KRAS変異と膵臓がん
膵臓がんの約9割以上には、がん細胞の増殖スイッチとなる「KRAS(ケーラス)遺伝子の変異」が存在します。
これまでもKRAS変異を狙った「KRAS阻害薬」の開発は進められてきましたが、
・ 特定の変異(肺がんで多いG12Cなど)にしか効かない
・ 短期間で耐性が生じる
といった課題があり、日本の膵臓がん治療では保険適用のKRAS阻害薬はまだありません。
こうした課題を克服するために開発されたのが、新世代の「汎RAS阻害薬」であるダラキソンラシブです。
この薬は、G12D・G12V・G12Rなど複数のKRAS変異に対応できる可能性に加え、変異型RASだけでなく正常型(野生型)RASを介したシグナルにも作用すると考えられている点が特徴とされています。
■ なぜ「野生型(正常型)RAS」への作用が重要なのか
従来薬と異なり、ダラキソンラシブが正常型RASにも影響を与える可能性があることには、治療効果を維持するうえで重要な意味があります。
① がん細胞の「迂回路(逃げ道)」を抑える
がん細胞は、変異型KRASのシグナルを薬で抑えられると、生き残るために別の経路を使って増殖を再開しようとします。
最近の研究では、その迂回路に正常型RASを介したシグナルが関与する可能性が示されています。
ダラキソンラシブは、RASシグナル全体を広く抑えることで、がん細胞が別ルートを使って増殖するのを防ぐことが期待されています。
② 幅広いKRAS変異に対応できる可能性
膵臓がんに多いG12D・G12Vなど、複数のKRAS変異に作用するよう設計されており、これまで治療選択肢が限られていた患者さんにも新たな可能性が広がります。
■ 細胞内タンパク質を利用した新しい作用機序
ダラキソンラシブは、増殖シグナルを出している「ON状態」のRASタンパク質を標的とする薬です。
細胞内の「シクロフィリンA」というタンパク質と複合体を形成し、その構造によってRASと下流シグナル分子の結合を妨げ、がん細胞の増殖シグナルを遮断すると考えられています。
■ 臨床試験での成果と今後の課題
💡 国際共同第3相試験(RASolute 302)で良好な成績
2026年、ASCOなどで、前治療歴のある転移性膵臓がん患者を対象とした国際共同第3相試験「RASolute 302」の結果が報告されました。
・ 標準治療群:生存期間中央値 6.7か月
・ ダラキソンラシブ群:13.2か月
という結果が示され、世界中の専門医から注目を集めました。
また、副作用による治療中断率が比較的低かった点も報告されています。
ただし、現時点では承認前の治験薬であり、長期的な有効性や最適な使い方については、今後の検証が必要です。
⚠️ 次なる課題:耐性(薬が効かなくなる現象)
がん細胞は生き残るために遺伝子を変化させ、
・ 新たな変異を獲得する
・ 別の増殖ルートを活性化する
などして耐性を獲得する可能性があります。
そのため現在は、「逃げ道を作らせないために、最初から他の薬と組み合わせる併用療法」の開発も進められています。
(参考)
タンゴ・セラピューティクスが過去最高値を更新、膵臓がん試験で92%の腫瘍縮小効果 — BigGo ファイナンス
■ 日本での実用化に向けて
KRAS遺伝子へのアプローチは、膵臓がん治療における長年の課題でした。
変異型だけでなくRASシグナル全体を標的とするダラキソンラシブは、その壁を打ち破る可能性を秘めています。
日本では現在、KRAS阻害薬は保険適用されていませんが、今回の国際共同試験には日本も参加しており、将来的な承認申請に向けた大きな一歩となります。
実際に日本の医療現場で使用できるようになるまでには、承認審査など一定の時間を要しますが、未来の選択肢を広げるための重要なプロセスが進んでいます。
一部報道では、来年中の承認の可能性にも言及されています。一日も早い国内承認を期待し、今後の動向を注視していきたいと思います。
(2026.06.12)